受け口(しゃくれている)

受け口とは

受け口は、反対咬合ともいわれ、下の前歯が上の前歯よりでている状態です。さらに、下の前歯が上よりも出ていない「隠れ受け口」もあります。隠れ受け口で気づきにくいのは、上下の前歯の先と先が咬みあう切端咬合や、前歯が、普通に上が下よりも出ているため気づかないことが多いようです。受け口の見方は、前歯の状態と上下糸切り歯から後ろ(以下、側方歯)のかみ合わせも合わせて評価します。


2本と咬み合い、上顎の歯の方が
下顎の同名歯よりも半分後方に
ずれた状態

上下の歯の良い位置関係は、欠損(もともと歯が少ない、すでに抜いてしまったなど)がなければ、下顎の左右中切歯(下の一番前の歯)以外は対顎の同名歯を含む2本と咬み合い、上顎の歯が下顎の同名歯よりも半分後方にずれた状態です。(分かりにくい場合は、写真を参照してください)例えば、上顎犬歯(前から3番目)は、下顎犬歯と下顎第一小臼歯(前から4番目)と咬み合い、下顎第二小臼歯(前から5番目)は、上顎第一小臼歯と上顎第二小臼歯と咬みあうのがよいかみ合わせになります。(下の写真の状態です) *上記は上下の歯の本数が同じ場合

①下の前歯が上の前歯よりも前にある。
あるいは、良いかみ合わせを考えて、
②上が半分より後方に、あるいは、③下が半分より前方にずれていれば「受け口」です。

下の写真は、左から乳歯列期(成長期)、混合歯列期(成長期)、永久歯列期の受け口です。

下の前歯が上の前歯よりも出ていているのが特徴です。(参照:上の写真 黄色いマルの部分)

また、口元は、見た感じ普通の状態 → 下顎がでている感じ → 三日月状の横顔と骨格性の受け口が強くなる程、右側の顔立ちへ変わっていきます。(参照:下の写真)こちらの写真は、7~8才で同年代の受け口の横顔です。右へ行くほど骨格的な要因が強くなっています。

この受け口に対して、写真は「隠れ受け口」です。混合歯列期の隠れ受け口です。一見普通のかみ合わせに見えますが、糸切り歯から後方の咬み合わせが、上が半分以上後方(下が前方に半分以上)へずれています。(本来は黄色い丸がくっつく状態だが離れてしまっている)口元も普通の感じなのが特徴です。「隠れ受け口」は気づかないことが多い受け口です。

受け口の原因とは

では、受け口の原因を考えてみましょう。不正咬合は①遺伝などの先天的な要素と、②悪習癖などの後天的な要素から出来上がっていきます。

先天的な要因で受け口になってしまう場合は、骨格的な受け口に移行しやすい特徴があります。したがって先天的な受け口の場合は、できるだけ早い時期から受け口をコントロールする必要があります。

後天的な受け口は、前歯の生え変わりの時にはえる方向が悪く、上下の歯が出合った時に受け口になってしまった状態で、骨格的な問題はありませんが、後天的な要素(悪習癖:悪い姿勢・口呼吸・べろの癖・指しゃぶりや唇をかむ癖など)に影響し、受け口が悪化していきます。
また、受け口の口元の特徴として、上唇が非常に引き締まっていて上顎や上顎の前歯の前方成長を阻害する傾向があり、これは成長により悪化する要因の一つです。

受け口を放置すると

成長期の骨格性受け口を放置すると、上下顎の骨格性のずれが大きくなり、幼少期から顔立ちが三日月状へ移行し、咬合治療で矯正治療だけでは対処できなくなることがあり、将来的に外科的矯正治療が必要となることがあります。

後天的な要因で受け口になってしまい、骨格的には問題ない場合でも放置すると骨格性の受け口へ移行していきます。顎の成長は、上顎の方が早い時期に成長するため、この時期に受け口の状態だと上顎の前方成長を妨げ充分に成長しないまま成長時期が終盤になり、この時期から下顎が強く前に成長するので骨格性の受け口へ移行していきます。

成長期から治療を行うことで抜歯、外科的矯正にならず非抜歯で治療をした骨格性反対咬合

初診

成長期治療から咬合治療へ移行

咬合治療終了時

年齢性別 12歳4か月 男の子
はじめのご相談 受け口が気になるので治したいとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 上顎後退・下顎前方位型骨格性反対咬合、前歯部から右側臼歯部反対咬合、V-shaped arch、下顎前歯叢生、上唇小帯肥厚による正中離開、低位舌が認められました。
治療は成長期間中に上顎前方牽引、上顎拡大・クロスバイトの改善、MFTによる舌機能の改善を行い、経過観察、成長終了後咬合治療へ移行予定です。
行ったご提案・診断内容 成長期治療:QHとバイトプレートで上顎拡大および反対咬合の改善、フェイシャルマスクによる上顎骨前方牽引、CLⅢ顎間ゴムによる下顎前方成長の抑制を行いました。
咬合治療:マルチブラケット、顎間ゴムによる咬合の改善し、保定装置で咬合の安定を行いました。
治療期間 成長期治療:2年1か月
咬合治療:1年11か月
おおよその費用 成長期治療:40万円+TAX
咬合治療:60万円+TAX
術後の経過や現在の様子 保定装置および機能的な問題の意識付けで経過観察中です。咬合は安定していますが、成長の残存を経過観察しています。
治療のリスク 凸凹(でこぼこ)や口元の突出が残る場合は、抜歯治療へ移行します。 その他、矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。

矯正治療の開始時期は?

成長期矯正治療

  • 受け口は下顎の大きな成長時期より前に前歯のかみ合わせを良くしておくことが必要なため、年齢にかかわらず見つけた時点で治療を考えます。
  • 装置が使えるお子様であれば3才以降、幼児期から治療をスタートします。

咬合治療

  • マルチブラケット法やインビザラインで咬合治療を進める場合は、永久歯へ歯が生え変わった11~12才頃からのスタートが一般的ですが、受け口では顔立ちの評価、下顎の成長が安定しているかをチェックしてからスタートします。
  • 咬合誘導法で進める場合は、成長期矯正治療修了後に移行します

受け口の治療方法

乳歯列期から治療する場合

以下のような5つのステップを行います。

注)写真①の右上A根端部GAは、外傷性咬合による膿袋で、この外傷性咬合は機能的な受け口が原因で、受け口を咬合を改善するまでは出来たり治ったりを繰り返していましたが、機能的受け口の改善後は出来なくなり、問題なく経過しました。






②上顎乳前歯を前に出す→③前歯のはえかわり後に拡大→④前歯を適正な位置へ並べる、下顎前方成長の抑制→⑤咬合治療

各ステップの詳細について

①→②のステップは、以下のような取外しできる装置で前歯の改善を行います。*乳歯列期(成長期矯正治療)

③→④のステップは、以下のような装置を使用します。*混合歯列期(成長期矯正治療)

④→⑤のステップ 咬合治療

咬合誘導法

マルチブラケット法・表側

マルチブラケット法・リンガル

インビザライン

年齢性別 4歳10か月 女の子
はじめのご相談 受け口はいつごろから治せますかとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 受け口は上顎の成長を阻害し三日月様の横顔に移行するため、装置が使用できれば早い時期から治療を行うことを説明しました。骨格的には下顎前方位型下顎前突、歯列は上下乳前歯舌側傾斜となっており、機能的に低位舌が見られました。
治療は成長期治療(第一期治療)で受け口を改善し経過観察、経過観察中の成長、前歯の生え変わりにより必要な装置で受け口再発を予防する予定です。咬合治療(第二期治療)前には再診断を行い、抜歯・非抜歯を検討する予定です。
行ったご提案・診断内容 成長期治療は乳歯列期にビムラーおよびMFTにより前歯部反対咬合の改善を行い、前歯生え変わり後はV-shaped archで前歯部に叢生・捻転が生じたため、2年生からQH・BHで歯列の拡大、前歯の並べ替えを行い経過観察。
咬合治療は口元の突出改善を希望されたため上下左右4抜歯治療で行いました。マルチブラケット、HA、顎間ゴムで治療を進めました。
治療後は保定装置、MFTで咬合の安定化を行いました。
治療期間 成長期治療(乳歯列期):11か月
成長期治療(小2頃から):1年
咬合治療:1年10か月 
おおよその費用 成長期治療:45万円+TAX
咬合治療:50万円+TAX
術後の経過や現在の様子 咬み合わせとともに口元の突出感も改善し、咬合も安定しています。保定装置の使用と機能的な問題の意識付けを継続し、咬合の安定化を行います。
治療のリスク 凸凹(でこぼこ)や口元の突出が残る場合は、抜歯治療へ移行します。 その他、矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。

混合歯列期から治療をする場合

①上顎前歯を前に出す→②必要により側方拡大をする→③前歯をそろえる→ ④-a 咬合治療(咬合誘導装置) または、 ④-b 咬合治療(マルチブラケット法・インビザライン)

永久歯列から治療する場合

①抜歯・非抜歯を決める→②必要な拡大をする→③咬み合わせの改善(マルチブラケット法・インビザライン)を行う

抜歯症例

永久歯列、犬突(八重歯)、抜歯 、 マルチブラケット法

叢生が強いため抜歯治療を行い、受け口、犬突、口元の改善を行った症例

年齢性別 21歳1か月 女性
はじめのご相談 受け口と八重歯を治したいとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 骨格的に上顎後退型下顎前突、上下V-shaped archで重篤な叢生と犬突になっていました。横顔は上唇が後退しており、コンケーブになっていました。機能的には低位舌が見られました。正面感では、上下正中線は不一致で上顎正中が右側偏位しています。治療はマルチブラケット法で行い、受け口と八重歯の改善に上下左右4抜歯を行い、動的治療後は保定装置で咬合の安定化を行います。
行ったご提案・診断内容 上下左右4本を抜歯、装置はマルチブラケットおよび歯列形態修正のためQH・BHを併用し、必要に応じ顎間ゴムを使用しました。また、MFTで機能的なコントロールを行いました。治療後は保定装置とMFTで咬合の安定化を行いました。
治療期間 2年1か月
おおよその費用 95万円+TAX
術後の経過や現在の様子 咬合は安定しています。保定装置とMFTで経過観察を行います。
治療のリスク 矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。